聖金曜日の音楽

静寂がうるさく感じられたのは初めてかもしれない。

日本フィルハーモニー交響楽団
第619回定期演奏会(第1夜)
指揮:上岡敏之


メンデルスゾーン交響曲第5番ニ短調宗教改革
ヴァーグナー/神聖舞台祝祭劇《パルジファル》より第1幕への前奏曲
ヴァーグナー/楽劇《トリスタンとイゾルデ》より前奏曲と愛の死

ドレスデン・アーメン」で両作曲家を結び付けるプロ。てっきり《宗教改革》がメインかと思っていたので,少しだけがっかり。
宗教改革》の第1楽章序奏では,管楽器のコラールとppの弦楽器による「ドレスデン・アーメン」が交替する箇所で,思い切りゲネラルパウゼを空けて息詰まるような静寂を演出していた。弦のppも本当に聞こえるかどうかというぐらい最弱。主部はかなり速かった。軽快なのは良いと思ったが,いささか腰が据わらない印象も。以上の傾向は第4楽章も同様だった。
最初は新鮮だった「ゲネラルパウゼ」&「最弱音*1」の芸風だったが,後半プロになると多用しすぎていて,正直食傷ぎみになった。「その静寂うるさいからもうやめて!」みたいな。ゲネラルパウゼの後の管楽器のアインザッツが(音程も…?)揃わないことが多くて,客にも演奏者にも緊張感を強いすぎだったような。特にパルシファルはいまひとつだった。
空間演出の面白さは特筆すべきだが,演奏者泣かせの指揮者なんじゃあるまいかと思った。

*1:《トリスタン》で通常朗々と歌わせるチェロの旋律も弱音で弾かせていた。セゲルスタムの時と対照的。