老婆殺すのに着ていく服がない

読書記も演奏会記と同様,読み終わったそのつど書き留めないとすぐに溜まってしまいますね。ここ1か月あまりで読んだ本からいくつか,順不同に。


罪と罰〈上〉 (岩波文庫)

罪と罰〈上〉 (岩波文庫)

罪と罰〈中〉 (岩波文庫)

罪と罰〈中〉 (岩波文庫)

罪と罰〈下〉 (岩波文庫)

罪と罰〈下〉 (岩波文庫)

信州旅行のお供。旅行の際は長編を携えることが多いので,作品と旅行のイメージが結びついて記憶に残ることが結構ある。2008年山陰旅行での『豊饒の海』四部作や,2009年北海道旅行での『ドン・キホーテ』など。
さて『罪と罰』だが,素直に最新の亀山訳にしておくんだったと後悔した。「ちょっ、」(舌打ちらしい),「へ、へ、へ!」,「〜なんだな!」などの頻出する訳文は読んでてイライラしてしまった。岩波文庫で出たのは2000年だが,訳文自体は60年代のものらしい。訳文に振り回されたせいか,ストーリーも期待外れであった。もっと理性的な主人公を想像していた。主人公が熱に浮かされていて言行に一貫性がないというのは,読んでいてあまり楽しいものではないですね。「部屋に誰か訪ねてくる→狸寝入り→人が帰った後でこっそり外出→熱に浮かされるまま出歩き,どうやってまた部屋に帰ってきたか憶えていない」の繰り返し。やっと話が動き出したと思ったら,スヴィドリガイロフが一時主人公みたいになるし。もう少しキリスト教の予備知識とペテルブルクのイメージがあれば違うのかと思います。


千曲川のスケッチ (新潮文庫)

千曲川のスケッチ (新潮文庫)

信州旅行の供その2。藤村の小諸時代の体験をスケッチした散文を,後年,年少の知人に宛てた設定で『中学世界』に連載したもの。中にはほぼそのまま『破戒』に転用されたエピソードもあって面白いが,公にされたのは『破戒』よりも後であるから,「メイキング・オブ・破戒」的な面もあって興味深い。


マノン・レスコー (新潮文庫)

マノン・レスコー (新潮文庫)

所謂Femme fataleものの元祖か。翻訳と思えない読みやすさに感激!プッチーニの脚本はずいぶん大胆にまとめていることがわかった(マスネは未鑑賞)。しかし,T氏は旧知でもないのに親切すぎるだろう。


日本語の作文技術 (朝日文庫)

日本語の作文技術 (朝日文庫)

これはずっと読みたいと思いつつ先送りになっていた。早くに読むべきだった。
特に重要と思われた,第3章・第4章で検証されている原則だけ引用しておく。

  • 修飾語の語順の原則
    • 節を先に,句をあとに。
    • 長い修飾語ほど先に,短いほどあとに。
    • 大状況・重要内容ほど先に。
    • 親和度(なじみ)の強弱による配置転換。
  • わかりやすい文章のために必要なテン〔読点〕の原則
    • 長い修飾語が二つ以上あるとき,その境界にテンをうつ。(重文の境界も同じ原則による。)
    • 原則的語順が逆順の場合にテンをうつ。