尊き御子の苦しみを見たまえる御母は

東京フィルハーモニー交響楽団
第52回東京オペラシティ定期シリーズ
指揮:アルベルト・ゼッダ
ソプラノI:イアーノ・タマー
ソプラノII:松浦麗
テノール:石倚★ (★=「さんずい」に「吉」)
バス:牧野正人
合唱:新国立劇場合唱団


ロッシーニ/劇場用カンタータ《ディドーネの死》
ロッシーニ/教会音楽《スターバト・マーテル

東フィルの演奏会は初めてである(新国立劇場のピットでは何度か聴いたが)。7日の《ウィリアム・テル》も聴いてみたかったが,神戸市室内合奏団と被ってしまった。
ゼッダはロッシーニの権威。ソプラノIが当初予定の人から変更になり,昨年《トスカ》のタイトルロールで聴いたタマーとなった。転がるような軽妙なタイプではないが,コントロールの効いた美しいアジリタで,《ディドーネ》の劇的表現・《スターバト・マーテル》の抑えた表現ともに良かった。若書きの《ディドーネ》を聴いて,劇的・ロマン的表現はベルリオーズの専売特許ではなかったことを思い知らされた。
スターバト・マーテル》で要となるメゾの松浦も,若手の方のようだが堂々としていた。そして石(東邦音大首席卒の中国人)の素晴らしいロッシーニテノールぶりに感動。テノールソロによる第2曲が好きで堪らない。聖母の嘆きを歌ってるのに何故か癒されるんですよね。スターバト・マーテルテノールソロが似合うのは,母性をくすぐるからだろうか?

終曲のアーメンはオケも合唱も特に熱がこもった圧巻の演奏であり,終演後は激しい喝采となった。実にいいものを聴いた。スターバト・マーテルに名曲が多い(筆頭はもちろんドヴォルジャーク)のはその同情に満ちた歌詞と,ペルゴレージの影響のお陰だろうか。
ロビーではエッティンガーくんがずっとアイフォンいじってました。