春を告げるマイスタを聞いて

読売日本交響楽団
第523回名曲シリーズ サントリーホール
指揮:レイフ・セゲルスタム
トランペット:ルベン・シメオ


ヴァーグナー/楽劇《トリスタンとイゾルデ》から 前奏曲と愛の死
ハイドン/トランペット協奏曲変ホ長調
(アンコール)リムスキー=コルサコフ/《くまん蜂の飛行》から カデンツ
セゲルスタム/交響曲第198番"Spring or Winter, Winter or Spring"(世界初演
ヴァーグナー/楽劇《ニュルンベルクのマイスタージンガー》から第1幕への前奏曲
(アンコール)ヴァーグナー/歌劇《ローエングリン》から第3幕への前奏曲

読響さん,当日学生券の席を最前列に振るのはしかたないとして,端から順に埋めていくのはやめませんか。早くに来た人がかわいそう*1だし,学生が少なかった今日は中央寄りの席がたくさん空いてしまっていて奇妙でした。
セゲルスタムはヴァイオリンを学んでいたこともあってか,弦楽器へのフレージングの指示が徹底しているようである。今回の両端のヴァーグナーも,一糸乱れぬ演奏だった。基本的には鳴らしまくりなのだが,概して短めの明瞭なアーティキュレイションで弾かせているため,柄の大きさからくる曖昧さを感じない。
ルベン君,写真に比べ育ちすぎワロタ。今年18歳ですからもう天才「少年」ではない。緊張の面持ちであったが貫禄の演奏,結構硬めの音質が良かった。オケは時々せわしなかった。
セゲ198(いちきゅっぱ?なお初演だが全然最新作ではない。)ではセゲルスタムは指揮をせず第2ピアノを担当。コンマスのハマさんが合図したり立ち上がって弾いたりする。始終色々な打楽器や鐘が聞こえてきたが,最前列だったのでちっとも状況わからず,かろうじてチューバの近くで巨大ハンマーが度々振り下ろされていたのと,ヴィブラフォンを両手に持った弦楽器の弓で擦っていた*2のが見えた。セゲルスタムのピアノが近かったことと,終盤でヴァイオリンの後方プルトの人たち(目の前にいた二人)のディヴィジ・ソロがあったことが救いである。今日の演奏は後日放送されるようなので全体像はそのとき確認するか。鳥の声によるという主要モティーフには「チチ・チー」(春がそこまで来ている前兆),「チチチ・チー」(運命が扉を叩くシグナル),「チチチチ・チー」(アジア人は四つのノック音を死にまつわるものと連想するでしょう)の3種あったらしいが,ほとんど「チチ・チー」の音型しか耳につかなかった。とはいえ面白い音響・貴重な体験でした。
マイスタは,ことT大オケに限って言えば「春」の季語のような存在*3として感覚的に染み付いているので,春近しを感じさせる絶妙なプログラムであった(笑)。まさかのアンコールまであって,ひと粒で3度以上おいしい演奏会でした。文字通りの太っ腹!

*1:これがわかっているので,最近自分はわざと遅めに整理券を取りに行くことにしている。

*2:なんとなく《船乗りと海の歌(海の男達の歌)》を思い出した

*3:マイスタの舞台はヨハネ祭(夏至)なので,本来は夏の訪れである。