超ニ長調

新日本フィルハーモニー交響楽団
第458回定期演奏会 サントリーホール・シリーズ
指揮:ヒュー・ウルフ
ヴァイオリン:イェウン・チェ


プロコフィエフ交響曲第1番ニ長調《古典》
プロコフィエフ/ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調
(アンコール)J.S.バッハ/パルティータ第2番より〈サラバンド
ドヴォルジャーク交響曲第6番ニ長調

後で気付いたけどニ長調できれいに纏められたプログラムだったんですね(バッハを除く)。
古典は,第1楽章がやはり難しそうだなと思いつつ,第2楽章以降で特に木管ティンパニが引き締まった演奏を聞かせて聴き応えあり。
そしてイェウン・チェのヴァイオリン協奏曲。間近で聴いたせいもあろうが,曲の凄みとソリストの凄み両方を感じさせる稀有な演奏だった。ゴリゴリ系ながら随所で美音,暗譜で集中しつ弾くさまはプロコフィエフを弾くために生まれてきたんじゃないかと思うほど。危険な箇所以外は目を閉じて弾いていたため,ウルフは合わせるのが大変そうではあったけど,緊張感のある演奏のおかげで曲もますます好きになった。この曲はオイストラフ&作曲家指揮の古いモノラル録音で聴いてきたためか,冒頭はSPから流れだすような*1どこか懐かしいイメージを持っている。
そして貴重なドヴォ6は,全体が見渡せる席に移動させていただいた。冒頭数秒で幸せな気分に満たされる。ウルフはこの曲を振り慣れているらしく(協奏曲以外は暗譜),彼なりの聴かせ方が定まっているようで安定感があった。第3楽章フリアントが速くて驚いたが,相対的にトリオも速めのテンポをとることで間延びすることを防げていて良かったと思う。第4楽章コーダも速めで大興奮。強いて言えばトロンボーンが大人しすぎて少し物足りなかったが,シモーノ&読響のドヴォ*2と対照的で興味深くはあった。全体にオーボエがG.J.。
ドヴォ6第4楽章コーダの大詰めには,バランスが難しい箇所がある(522〜525小節)。Fl.・Ob.・Cl.が第2主題の素材によるちょっとダサい旋律を吹き,それ以外のトゥッティが二分音符(テヌートもしくはアクセント)でブンチャンブンチャンやっている4小節間。この箇所で木管を意図的にはっきり聞こえさせているのは,6種聴いた録音の中ではスウィトナー盤だけ*3なのだが,私はこのスウィトナーのやり方を支持している。ダサい部分を隠匿してなんのドヴォルジャークがあろうか,と思うのである。今回の実演でもこの箇所の処理が最大関心事だったのだが,ウルフはなんと,1番トランペットに木管と同じ旋律を吹かせて補強していた!なるほど,木管がベルアップしたところで限界があるし,かといって弦楽器をあまり抑えこんではせっかくの盛り上がりに水を差すということで,賢い解決策ではなかろうか。ウルフが自分と同じ問題意識を持ってくれていたことがわかり,とても嬉しかった(笑)。

*1:ヴィオラの刻みがレコードのノイズを彷彿させる。

*2:ただし6番は聴いていない。

*3:クーベリックBPOも一応聞こえる。他の録音では知らなきゃ聞き取れない。