フィンランドは目覚める

オタクが長じて仙人になると,きっとセゲルスタムのような風貌になる気がする。

読売日本交響楽団
第119回東京芸術劇場マチネーシリーズ
指揮:レイフ・セゲルスタム
ヴァイオリン:松山冴花


シベリウス交響詩フィンランディア
シベリウス/ヴァイオリン協奏曲ニ短調
シベリウス交響曲第1番ホ短調

いじりまくりの《フィンランディア》が面白かった!突如のダイナミクス変化*1,緩急自在のテンポ*2。中間部の旋律=フィンランド賛歌を弦楽器が受け継いだ後では,裏で通奏されるバスドラ(本来はppp)を強調して遠雷のような効果を出していた。そして同旋律の後半部を繰り返す際(Mの7小節前)には,ヴァイオリンはオクターヴ上げ!曲の最後の和音ではとどめのfp。ここまで確信を持ってやってくれると,恐れ入りましたという感じです。
前から2列目の席だったため,特に協奏曲では第1ヴァイオリンの刻みがよく聞こえること。ソリストは,第2楽章〜第3楽章冒頭あたりでちょっとペースを崩したかに見受けられたが,よく持ち直したかと思う。
セゲルスタムはインタヴューで,シベ1冒頭のクラリネット・ソロが「シーベリウス」に聞こえる,と語っていたが,ちょっと無理があると思う(笑)。それはともかく,伝説の叙事詩が語られるのを聴くような,特筆すべき名演だった。特に指揮台越しによく見えた鈴木氏(協奏交響曲以来,コンタクト&髪短くなってスッキリされたよう)の,語りかけるようなヴィオラが協奏曲・交響曲両方で印象的であった。読響の演奏にここまで一糸乱れぬ印象を受けるのもそうそうあることではない。シベリウスがオケに合っているのか,セゲルスタムがオケに合っている*3のか,おそらく両方だが,とにかく作品に対して明確なヴィジョンを持った人の指揮で聴くことは大切だなと思った次第。

*1:おそらく,わざわざffを書き直しているような箇所を強調する意図かと思われる

*2:アレグロに変化する所でもデジタルに変えるのではなく,ゆっくりから始めて急激なアッチェレでアレグロに持っていく

*3:今年で5回目の共演というから,もう一から言わなくても通じ合っているのでしょう