ドヴォ教徒

読売日本交響楽団
第525回名曲シリーズ サントリーホール
指揮:下野竜也
ピアノ:アンドレアス・ヘフリガー


ブラームス/ピアノ協奏曲第2番変ロ長調
ドヴォルジャーク交響曲第7番ニ短調

おなじみ最前列上手側の席だったためヴィオラのやっていることがよくわかった。偏った聞こえ方が苦にならないぐらい素晴らしい演奏会だった。
ブラームスはとりわけ第3楽章が白眉。間を置かずに第4楽章に入るのも自然で納得。各種ソロも文句なし。
ドヴォ7は輪をかけて素晴らしかった。この曲は紛れも無い傑作だと思いながらも,第1楽章が閃きに満ちすぎているせいか,しばしば竜頭蛇尾な印象を受けてしまうことがある。屈託のないハッピーエンドを基調としていた6番までと異なり,終盤まで陰鬱で強迫的な要素が強く残るのが特徴であるが,それは同じニ短調交響曲である4番*1などへの反省を踏まえて作曲家が自らに課した課題だったのかもしれない。他にも《フス教徒》との主題的関連などの問題もあり,ただ力み返るだけではうまくいかない,扱いにくい曲であるように思われる。以前スクロヴァ&読響で聴いたときはたしか前プロで,比較的さっぱりした演奏だったような記憶がある。
今回のシモーノ氏の指揮は,意表をつくダイナミクス変化*2などアイディアに満ちたもので,最後まで非常に説得力があった。たとえば第3楽章(4分の6)では,冒頭弦楽器の四分音符を長めに弾かせ,一方トリオから再び回帰した部分ではスタッカートで明瞭に弾かせていた。スコアを見ると前者はスピッカート(p),後者はスタッカート(pp)なので,これも楽譜に忠実に従った結果だったことがわかる。熱っぽい中にも余裕さえ感じられる指揮ぶりで,ドヴォルジャーク解釈者としての自信を強めているように見受けられる。読響もそれに最大限応えていた。氏はこの7番を「コラールシンフォニー」と捉えているそうな。
来年以降2番・3番・5番(・8番)が聴けると思うだけで生きている甲斐があるというものです。

*1:ニ短調とはいいながらすぐに長調になってしまう。

*2:スコア自体がかなり凝った表記になっているようなので,それを最大限生かした結果だろう。