柳,柳

《チェレネントラ》に続き2度目の新国立劇場。オペラ観劇としては5作目。

新国立劇場
ヴェルディ/《オテロ


指揮:リッカルド・フリッツァ→石坂宏
演出:マリオ・マルトーネ
オテロ:ステファン・グールド
デズデーモナ:タマール・イヴェーリ
イアーゴ:ルチアーノ・ガッロ

千秋楽。行こうか迷っていたが,行って正解だった。ヴェルディの最高傑作と言われるのがわかってきた気がする。実演に接すると交響曲を聴いているかのようだ。
イヴェーリのデズデーモナがとりわけ良かった。柳の歌〜アヴェ・マリアなど非の打ち所がない。グールドも,第一声ではオテロにしては軽いかな?と思ったが,そんなこともなく迫力のある歌唱(特に第2幕)で満足。
長身のガッロは身のこなしが格好良すぎ,声もブッフォ向きなのでドン・ジョヴァンニにしか見えない。策士のイアーゴという雰囲気。カッシオのナコスキもイメージぴったりで良かった。
ヴェネツィアをイメージして水を張ったセットは美しく*1,要所要所で登場人物が水に入っていくのもなるほどと思ったが,オテロの心境に合わせて水が波立つのなどはやや予定調和的で,びちゃびちゃ煩いだけ。一杯飾り*2だけに後半にもう少し工夫が欲しかった。第2幕でデズデーモナが脚を露にして男を誘惑する場面は,どうやらオテロの妄想を表していたようだが,わかりづらくてデズデーモナのイメージが分散しただけのように思った。
休憩時間がなかなか終わらないので,何かトラブル(水漏れ?)かと思ったら,「指揮者のリッカルド・フリッツァは体調不良のため,第3幕より音楽ヘッドコーチの石坂宏が指揮を務めます」のアナウンス。そんなこともあるんですね。カーテンコールにはフリッツァもバツが悪そうに出てきてたので,病院に担ぎ込まれるほどではなかったよう。風邪かな…と思ったらなんでも脱臼だったらしい。終演後にはわざわざ出口で石坂氏のプロフィールが配られていた。
今回聴いて思ったのは,ベルリオーズの《ロメジュリ》を思わせる部分が何箇所もあったこと。第1幕終盤のデュエットは愛のシーンにそっくりな気がする。シェイクスピアつがりで影響を与えた可能性もあるだろうか?《ロメジュリ》はヴァーグナーにも影響を与えているし,もしヴェルディもだとしたらベルリオーズは凄い。

*1:スカラ座のDVDがちっとも面白くないセットだったこともあり。

*2:転換のない舞台セットのことをこう言うそうだ。