春来にけらし 白妙の

早くも春めいてますね。花粉が飛び始めると芸を考えなくてはいけないような気がしてくるのは,何故だろう。
昨日は久々に良いニュースを聞いた。思わず頬が緩んでしまいます。それはさておき。

不道徳教育講座

不道徳教育講座 (角川文庫)

不道徳教育講座 (角川文庫)

軽ーいエッセイ。同時代人にとって三島が,文学の第一人者であると同時に華やかなタレント(芸能人)だったことがよくわかる。
あとがきにおいて奥野健男氏は,「純文学者三島由紀夫のイメージは,ニコリともしない怖ろしい文学の鬼という感じです。」「ぼくはいつも三島氏の〔じかに交際してみるとわかる〕そういう機知に富んだ楽しい遊びが文学にあらわれないのかと考えていました。」などと書いている。そうかなあ。今まで読んだ数作品の印象では,三島はすごく「オチ」を志向して書いてそうだと思ったけど*1。この『不道徳教育講座』の各講(とりわけ最終講)がそうであるように。発想が落語的といえるかもしれない。

破戒

破戒 (新潮文庫)

破戒 (新潮文庫)

奇遇の連続で話が進んでいくご都合主義な展開と,寄り道や回想の少ない一本道のストーリーは,ずいぶんテレビドラマ的だと思った(実際むかしドラマ化されている)。「生徒に人気のある若手教師が校長一派と対立する」という設定も,教師ものドラマの原型と言えなくもない。いまドラマ化したら,どうせ校長役あたりに大杉漣が出るんだろうな。なんて考えながら読んだ。
主人公の名が「丑松」で,父親の死因が「牛」であるのは象徴的だ。

*1:少なくとも『午後の曳航』『春の雪』『天人五衰』のラストにはそれを感じた。してみると,そうした機知を反映させる傾向が後期になると強まったのかもしれない